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nehanリトリート「走馬灯を見る旅」

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音と呼吸がひらく「本当の私」
脳と身体のリズムから紐解く自己変容の科学

はじめに

音楽を聴いて懐かしい思い出がよみがえることや、深呼吸をして気持ちが落ち着く体験は、誰もが経験したことがあるでしょう。
nehanリトリートでは、この「音」と「呼吸」を組み合わせることで、参加者が普段はアクセスできない無意識の記憶に触れ、再統合するプロセスをサポートしています。

ここで紹介する方法は、単なる感覚的・スピリチュアルな体験ではなく、神経科学や心理学の研究に裏付けられた実践です。


音楽が導く脳波変化と記憶の再統合

α波とθ波 ― 意識の境界を開くリズム

脳は常に電気的なリズム(脳波)を刻んでいます。

  • α波(8〜13Hz)はリラックスと集中が両立しているときに優位となり、外界への過剰な注意が和らぎ、内面への意識が深まります。
  • θ波(4〜8Hz)は浅い眠りや深い瞑想、夢見の状態で現れ、抑圧されていた無意識の記憶や感情が浮かび上がりやすくなると考えられています【1】

nehanリトリートで使用しているニューロミュージックは、このα波やθ波を高めるよう設計されています。
たとえば研究で用いられるバイノーラルビート(左右の耳にわずかに異なる周波数の音を聞かせることで、脳内に新しいリズムを生じさせる技術)は、脳がそのリズムに同調し、α波やθ波が高まることが報告されています【2】。
このような状態はリラクゼーションや記憶処理の改善にもつながるとされています。

記憶の“書き換え”が起こるとき

記憶は一度定着しても不変ではなく、想起されるたびに「再統合」と呼ばれるプロセスで新たな情報と結びつき、再保存されます【3】。
研究によれば、記憶を思い出す際に音楽を流すと、その出来事に伴う感情が音楽の影響で更新されることが確認されています【4】。

つまり、過去の辛い記憶も、安心できる音の環境と結びついて再体験されることで、「自分を形づくる大切な一部」として捉え直され、情動記憶そのものの質が変化していくのです。


呼吸がもたらす生理的変化と意識の拡張

ゆっくりした呼吸 ― HRVを高め心が安定する

1分間に6回程度のゆったりした呼吸(スローブリージング)は、副交感神経を優位にし、心拍変動(HRV)を高めます。
HRVが高い状態は「心の柔軟性」が高まっていることを示し、ストレス耐性や感情の安定と関連しています【5】。
脳波の面でもα波が増加し、不安や抑うつ感の軽減が報告されています。

速い呼吸 ― 変性意識への扉をひらく

一方で、意図的に速く深い呼吸を繰り返すと、血中のCO₂濃度が低下し、脳の血流や神経活動に変化が生じます。これにより変性意識と呼ばれるトランス状態や非日常的な意識状態が訪れ、普段は表層に出てこないトラウマ記憶や幼少期の体験などが浮かび上がることがあります。

この原理を応用したのが、精神科医スタニスラフ・グロフによるホロトロピック・ブレスワークです【6】。臨床報告では、呼吸法によって抑圧されていた記憶が表出し、感情解放やカタルシスにつながるケースが多数報告されています。さらに、Koxらによる研究では、ウィム・ホフ・メソッド(高速呼吸+冷水曝露)を行った被験者の自律神経と免疫反応に顕著な変化が見られました【7】。これは、呼吸を通じて心身の反応を意識的に調整できることを示しています。


音と呼吸がもたらす統合的な変容

呼吸によって普段は無意識下に沈んでいる記憶が想起され、音楽によって脳波や感情ネットワークが整えられると、記憶は安全に追体験されます。
その場で行われるリフレーミング(再解釈)により、記憶は新しい意味をまとって再保存されます。

nehanリトリートでは、この「インテグレーション(情動記憶の再統合)」のプロセスを重視しており、参加者が自らの体験を新しい文脈で受け止め直せるよう丁寧にサポートしています。

 神経科学的には、偏桃体・海馬・前頭前野といった領域が同時に再活性化し、新しい情動情報とともに記憶が再統合される現象として説明されています【8】。

こうして、かつての恐怖体験が「自分を形づくる大切な一部」として捉え直されることで、記憶の情動的性質そのものが変化していきます。これは一時的な気分の変化ではなく、脳が記憶を整理し直すことで、過去の体験がまったく違う意味を持つようになる現象です。」


おわりに

nehanリトリートは、呼吸と音楽というシンプルでありながら深遠なアプローチを、最新の科学的知見に基づいて設計しています。

POINT
  1. 呼吸は、変性意識と記憶想起の「扉」を開く。
  2. 音楽は、脳波と感情を調律し、記憶の再統合を導く。

この二つが重なり合うことで、心身は安全に記憶を解き放ち、新しい意味を再び与えることができます。
それはまさに、過去を癒し、未来を創る「自己変容のプロセス」なのです。


参考文献

  1. Klimesch, W. (1999). EEG alpha and theta oscillations reflect cognitive and memory performance. Brain Research Reviews, 29(2-3), 169–195.
  2. Garcia-Argibay, M., Santed, M. A., & Reales, J. M. (2019). Efficacy of binaural auditory beats in cognition, anxiety, and pain perception: a meta-analysis. Psychological Research, 83, 357–372.
  3. Nader, K., Schafe, G. E., & LeDoux, J. E. (2000). Fear memories require protein synthesis in the amygdala for reconsolidation. Nature, 406, 722–726.
  4. Mather, M., & Sutherland, M. R. (2015). Arousal-biased competition in perception and memory. Psychological Science, 26(2), 194–206.
  5. Lehrer, P. M., Vaschillo, E., & Vaschillo, B. (2000). Resonant frequency biofeedback training to increase cardiac variability. Applied Psychophysiology and Biofeedback, 25(3), 177–191.
  6. Grof, S. (1988). Holotropic Breathwork: A New Approach to Self-Exploration and Therapy. SUNY Press.
  7. Kox, M., et al. (2014). Voluntary activation of the sympathetic nervous system and attenuation of the innate immune response in humans. PNAS, 111(20), 7379–7384.
  8. Schiller, D., et al. (2010). Preventing the return of fear in humans using reconsolidation update mechanisms. Nature, 463, 49–53.

名田 憲史

名田 憲史

リトリート事業の統括ディレクター。 鯉谷さんの右腕的に様々な業務を担当させてもらっています。リトリートの企画運営やオペレーション整備、事業として成り立たせていくためのあれこれ、代表の鯉谷さんやリエさん、そしてnehanの取り組みに共感して積極的に協力してくださる皆様と共に、少しずつ目の前のことを進めています。

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