リトリート詳細

「走馬灯を見る旅」2泊3日のnehanリトリート

詳細はこちら

頑張っているのに満たされない: 手に入れた3日後に、また元へ戻る理由

この記事の要点

  • 手に入れた喜びが数日で薄れるのは、意志や感謝が足りないからではありません。人の感覚は「慣れる」ようにできていて、宝くじの高額当選者ですら、日常の小さな喜びの感度が落ちていたことが報告されています。
  • さらに厳しい発見として、収入・評価・見た目といった「外向きの目標」は、達成しても心の健康が上がらないどころか、不調と結びついたという追跡研究があります。満たされなさは、目標が小さすぎたからではありません。
  • 長い目で見て人が悔やむのは「やったこと」ではなく「やらなかったこと」。だから必要なのは、もっと頑張ることではなく、自分が本当は何を望んでいたのかに触れ直す時間です。

昇進が決まった日のことを、僕はよく覚えています。

嬉しかったんです、ちゃんと。連絡をくれた上司に礼を言って、その夜は好きな店で食事をして、家族にも報告した。……そして三日後、いつもの月曜の朝、同じ電車の同じ位置に立って、同じようにスマホを見ている自分がいました。あれ、と思った。何かが変わるはずだったのに、風景が一ミリも動いていない。

こういう経験、あなたにもありませんか。欲しかった役職。目標だった年収。買うと決めていたもの。手に入れた瞬間はたしかに嬉しいのに、その熱はカップの湯気みたいに、驚くほど早く消えていく。そして次の目標を立てる。今度こそ、と思いながら。

先に、いちばん大事なことを書きます。満たされないのは、あなたの努力が足りないからでも、感謝が足りないからでもありません。むしろ「頑張って手に入れる」という方法そのものに、構造的な上限がある——調べていくと、そういう研究が並んでいました。

一文で言うなら、こうです。満たされなさとは、目標の大きさの問題ではなく、「何を目標にしているか」の種類の問題である。

次の山に登れば見えると思っていた景色は、登った瞬間に、また次の山の向こうへ移動する。

宝くじに当たった人たちに、起きていたこと

古典的で、いまも引用され続ける研究があります。ブリックマンらが1978年に、高額の宝くじ当選者22人と、一般の人たち、そして事故で身体に障害を負った人たちを比べたものです。

結果は、当時の常識をひっくり返しました。当選者の幸福度は、一般の人たちと統計的に意味のある差がなかったのです。さらに興味深いのはその先で、当選者は「友人とのおしゃべり」「朝のコーヒー」「テレビを見る」といった日常のささやかな出来事から得られる喜びが、はっきり下がっていました。

つまり、大きな喜びを一度味わうと、それが基準になってしまう。焼肉を食べた翌日の卵かけご飯が、なんとなく物足りなく感じる——あの感覚が、人生のスケールで起きるということです。手に入れたものは、喜びを足すだけでなく、それまで喜べていたものの価値を静かに引き下げる。ここが、この研究のいちばん怖いところでした。

夜明けの山頂に立つ人の後ろ姿。その先にさらに高い峰々が連なっている

登山にたとえるなら、こうです。頂上に立てば終わりだと思っていた。でも登ってみると、雲が晴れて、その先にもっと高い峰が連なっているのが見える。しかも困ったことに、いま立っている場所の標高には、もう感動しなくなっている。これを人は「向上心」と呼びますが、同時に「満たされなさの製造装置」でもあるわけです。

目標を達成しても、幸福が上がらなかった目標がある

ここまでなら「人は慣れる生き物だから仕方ない」で終わります。でも、もっと踏み込んだ研究があって、僕はこれを読んだときに背筋が伸びました。

ニーミック、ライアン、デシによる2009年の追跡研究です。大学を卒業した人たちを1年間追いかけ、掲げた目標を実際に達成できたかどうかと、その後の心の健康を調べました。目標は二種類に分けられています。内発的な目標(人としての成長、深い人間関係、社会への貢献)と、外発的な目標(お金、名声、外見や評価)。

結果はこうでした。内発的な目標を達成した人は、心の健康が向上した。ところが外発的な目標を達成した人は、心の健康が向上しなかった。それどころか、不調の指標とむしろ結びついていたのです。

達成できなかったから苦しい、という話ではありません。達成したのに、良くならなかった。

どこまでも上に続く、誰も乗っていないエスカレーター

これは「お金が悪い」という話ではないので、そこは正確に書きます。収入と幸福の関係については長く論争があり、キリングスワース、カーネマン、メラーズが2023年に共同で行った再分析では、多くの人にとって収入と幸福は高い水準まで上がり続ける一方、もともと不幸せな層では一定額を超えると頭打ちになる、という結論が出ています。お金は効きます。ただし、心の土台が沈んでいる人の沈みを、お金は埋めてくれない。そういう話です。

POINT

問題は「目標を達成できていないこと」ではなく、達成しても効かない種類の目標に、人生の時間の大半を使ってしまっていること。だから頑張るほど、満たされなさが深くなることがあります。

「もっと頑張る」が効かない理由

満たされないとき、僕たちが取りがちな手はだいたい決まっています。目標をもっと大きくする。転職や環境を変える。感謝の習慣をつける。自己啓発書を読む。

どれも悪くありません。実際、感謝の実践には研究の裏づけもあります。ただ、どれも「外向きの目標を追う」という構造は変えないまま、その中で頑張り方を変えているだけなんですよね。エスカレーターの上を逆走する速度を上げても、乗っているエスカレーターは変わらない。

では、なぜ僕たちは乗り換えられないのか。理由はシンプルで、自分が本当は何を望んでいるのかが、もう分からなくなっているからです。二十年ぶんの「こうあるべき」「これができたら認められる」を積み上げてきた人ほど、内発的な望みは、その下に埋まっています。頭で「本当にやりたいことは何だろう」と考えても出てこないのは当然で、それは考えて出てくる場所にはもう無いからです。

必要なのは、思考が静まり、身体がゆるんだ状態をつくったうえで、感情・記憶・身体感覚に順番に触れ直していくこと。nehanのリトリート「走馬灯をみる旅」は、そのための段階を踏んだ独自のアプローチを、八ヶ岳の森での2泊3日で実践する時間です。具体的な進め方は、無料のオンライン講座でお伝えしています。

FREE PROGRAM

身体から、人生を見つめ直す入口へ

下のボタンから進み、メールアドレスとLINEをご登録いただくと、無料のオンライン講座を受けられます。記事では届けきれない“実際のやり方・体験”は、その講座でお伝えしています。

無料講座を受け取る

ご登録は無料・いつでも解除できます。リトリートは医療行為ではありません。体験には個人差があります。

人が最後に悔やむのは、やったことではない

もうひとつ、この話の輪郭をはっきりさせてくれる研究があります。

ギロビッチとメドヴェックが1994年に示した「後悔の時間的パターン」です。短期的には「やってしまったこと」を悔やむが、長い目で見ると、人が悔やむのは圧倒的に「やらなかったこと」に移っていく。しかも、やらなかったことへの後悔は、時間が経っても薄れにくい。行動した後悔は、その後の行動で埋め合わせたり、意味づけを変えたりできる。でも「やらなかった」は、埋め合わせようがないからです。

暗い部屋で光の帯を放つ、古い映写機

人生の最後に走馬灯のように流れるのは、達成した目標のリストではないのだろうと思います。取らなかった連絡。言わなかった一言。行かなかった場所。選ばなかったほうの道。

だとすれば、いま満たされない感じがあるのは、故障の合図ではなく、案内の合図なのかもしれません。「その方向にいくら積み上げても、あなたの欲しいものはそこには無いよ」という。無視して走り続けることもできます。ただ、その声はたいてい、消えないんですよね。

こんな状態なら、この記事はあなたの話です

  • 目標を達成した直後は嬉しいのに、数日で元の温度に戻る
  • 客観的には順調なのに、「これでいいんだっけ」が消えない
  • 次の目標を立てないと、自分の価値が保てない気がする
  • 何が欲しいのかと聞かれると、答えに詰まる

POINT

ひとつでも当てはまるなら、あなたに足りないのは努力や才能ではありません。自分の内側の望みに触れる時間が、ずっと後回しになっているだけです。これは能力の問題ではなく、時間配分と、触れ方の問題です。

FAQ

Q: 向上心を持つのは悪いことなんですか? A: まったく違います。研究が言っているのは「外発的な目標は無意味」ではなく、「それだけでは心の健康は上がらない」ということです。内発的な望みが土台にあるうえでの向上心は、むしろ人を支えます。問題は、土台のないまま積み上げ続ける形です。

Q: 感謝の習慣は効果がありませんか? A: 効果は報告されています。ただ、感謝は「いま在るもの」への感度を戻す方法で、「自分が本当は何を望んでいるか」を教えてはくれません。両方あるといい、という関係です。

Q: 満たされない感じが強く、何もやる気が出ません。 A: 意欲の低下や気分の落ち込みが続いている場合は、無理をせず医療機関や専門家にご相談ください。この記事は医療の代わりにはならず、感じ方や変化には個人差があります。

昇進した三日後の月曜、同じ電車で「あれ」と思ったあの感覚を、僕はいま、悪いものだと思っていません。あれは、方向を間違えていると教えてくれる、静かなアラームでした。nehanの無料オンライン講座では、その声を無視せず扱っていくための段階的なアプローチの全体像をお伝えしています。

FREE PROGRAM

身体から、人生を見つめ直す入口へ

下のボタンから進み、メールアドレスとLINEをご登録いただくと、無料のオンライン講座を受けられます。記事では届けきれない“実際のやり方・体験”は、その講座でお伝えしています。

無料講座を受け取る

ご登録は無料・いつでも解除できます。リトリートは医療行為ではありません。体験には個人差があります。

出典・参考

  • Brickman, P., Coates, D. & Janoff-Bulman, R.(1978)「Lottery winners and accident victims: Is happiness relative?」Journal of Personality and Social Psychology, 36, 917-927
  • Niemiec, C. P., Ryan, R. M. & Deci, E. L.(2009)「The path taken: Consequences of attaining intrinsic and extrinsic aspirations in post-college life」Journal of Research in Personality, 43, 291-306
  • Killingsworth, M. A., Kahneman, D. & Mellers, B.(2023)「Income and emotional well-being: A conflict resolved」PNAS, 120, e2208661120
  • Gilovich, T. & Medvec, V. H.(1994)「The temporal pattern to the experience of regret」Journal of Personality and Social Psychology, 67, 357-365
  • Kasser, T.(2002)『The High Price of Materialism』MIT Press

関連記事

Yoshihiro Koitani

Yoshihiro Koitani

メキシコ移住20年。先住民族やシャーマニズムの儀式を通じて、人が自然と深くつながる原点を学ぶ。トゥルムで国際的なリトリートを企画・開催。2024年に帰国しnehanリトリートセンターを設立。「本当の私」と出会うリトリートを届けています。

関連記事

ページ上部へ戻る