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「走馬灯を見る旅」2泊3日のnehanリトリート

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やりたいことがわからない30代: 探し回って気づいた、答えが出ない本当の理由

この記事の要点

  • やりたいことがわからない30代の迷いは、「情熱がない」より情報・葛藤・判断の揺れが重なって起きることが多い。
  • 仕事を変える前に必要なのは、立派な答え探しよりも「誰の期待で選ぼうとしているか」を見分けること。
  • 頭で候補を比べ続けるだけでは反応パターンは残る。身体感覚と感情も含めて、自分の選択を取り戻す場がいる。

月曜の朝、9時12分。通勤電車で求人アプリを開いて、三つ目の募集を閉じる。年収は悪くない。未経験可。リモートも週二日ある。それでも、指が止まる。

「で、結局、自分は何がしたいんだろう」

この画面、何度開きました? 求人を保存して、翌日にまた見て、「いや、違うか」と外す。あるいは応募ボタンの手前まで行って、なぜかトイレ掃除を始める。30代でこの問いが出ると、少しどころか、わりと焦るんですよね。周りには昇進した人、独立した人、子どもが生まれた人がいる。SNSには、朝からランニングして副業で月いくら、みたいな人もいる。あれを見て元気になる日もあるけれど、だいたいはコーヒーが冷めるだけです。

僕は、「やりたいことがわからない30代」は、やりたいことが存在しない状態ではないと思っています。外から入った基準と、自分の反応が混線している。だから、選ぶ感覚をつかみにくくなっている状態です。

世間は「30代なら、自分の軸くらい持て」と言う。でも僕はそうは思わない。30代はむしろ、仕事で任されることが増え、生活の責任も増え、人の期待がいちばん大きな音で聞こえやすい時期です。軸がないんじゃない。周囲のラジオが全部ついたまま、あなたの声だけが聞こえにくくなっているんです。

やりたいことは、正解を当てた人に与えられる賞品ではない。

「情熱がない」と決めるのが、いちばん早すぎる

「どうせまた精神論でしょ」と思いました? その警戒はまともです。気合いで天職を見つけよう、なんて話ではありません。「好きなことを仕事に」と言われて、余計にわからなくなる人だっている。好きなパン屋があるからといって、毎朝4時に起きて仕込みをしたいかは別問題ですからね。

2022年の研究では、14歳から50歳まで8,918名のキャリア決定の困難を分析し、五つの型が示されました。もっとも多かったのは職業や自分についての情報が足りない型で39%、次が意思決定全般で迷いやすい型の31%。選択への関心や動機そのものが低い無動機型は6%でした。

ここ、かなり見落とされます。「やりたいことがない」と言う人の多くは、空っぽなのではない。判断に使える材料が足りないか、材料を前にして決める回路が疲れている。研究は自己申告にもとづくので、そのまま30代全員に当てはめることはできません。ただ、無気力だけで説明できないという見方には、かなり現実味があります。

たとえば土曜の15時、家のダイニングで転職サイトをスクロールしている場面。広告営業、広報、採用、カスタマーサクセス、Web制作……どれも「少しならできそう」。でも実際に働く一日の手ざわり、求められる対人関係、何を終えたときに気分が上がるかは知らない。知らないものを、人生をかけて選べと言われる。そりゃ固まります。メニューの写真だけ見て、食べたことのない料理を「一生これだけ食べますか」と聞かれているようなものです。

たぶんあなたにも、「嫌いではない。でも続けたいとも言い切れない」という仕事があるんじゃないでしょうか。その曖昧さを、情熱不足の証拠みたいに扱わなくていい。

まず分けて眺めたいのは、この三つです。

  • 仕事内容の情報が足りないのか
  • 自分が何に反応するかの情報が足りないのか
  • 失敗や周囲の評価が怖くて、選んだ後を想像できないのか

同じ「わからない」でも、必要なものはまるで違います。求人を100件増やしても、親の期待を背負ったままなら苦しくなる。逆に、迷いやすい自分を責め続けるより、小さく現場を見に行ったほうが進む場合もあるんですよね。

年収の条件が悪いのではなく、他人の声が大きすぎる日

やりたいことがわからない30代: 探し回って気づいた、答えが出ない本当の理由 のイメージ 1

萩原俊彦・櫻井茂男(2008年)は、大学生を対象に「やりたいこと探し」の動機を調べ、興味や価値観から出る自己決定的な動機が高いほど、進路不決断が少ないという関連を報告しました。反対に、報酬や評価を主な理由にした外発的な動機が強いと、迷いも増える傾向がありました。

対象は大学生なので、30代の転職や独立へ直線的には当てはめられません。それでも、そこで働く機序はわかりやすい。外からの評価は、候補を比較する物差しにはなります。でも「自分はこの時間を使いたいのか」という感覚までは決めてくれない。評価の物差しだけで進路を決めると、どの候補にも別の人の顔がくっついてくるからです。

夜22時、洗い物をためた流しの横で、友人から「次の会社、年収上がるなら行けば?」とLINEが来る。親には「安定した会社が安心」と言われる。パートナーは「残業が少ないほうがいいよ」と言う。全部、もっともです。むしろ、あなたを心配して言っている。でも、そこにあなたの「面白そう」はあるだろうか。

「年収を上げたい」と口では言っているのに、求人を見るたびに少し気が重くなること、ありませんか。欲しくないわけじゃない。でも、そのために毎日払う時間や気力まで引き受けたいのかは、別の問いです。

僕は、30代のやりたいこと探しで「強みから考えよう」という助言を半分は疑っています。強みは役に立つ。でも、得意なことを続けた結果、もうやりたくなくなっている人もいるからです。Excelが速いから集計を任され続けて、日曜の夕方には胃のあたりが重くなる。能力と望みは、別のものです。包丁が使える人が、毎晩大人数の料理をしたいとは限らない。それと同じです。

POINT

「人に褒められること」と「自分が繰り返しても消耗しにくいこと」を、同じ箱に入れない。ここを分けるだけで、選択肢の見え方が変わることがある。

紙に書くなら、「向いている仕事」ではなく、直近一週間で時間を忘れた行為を三つだけ拾うほうがいい。資料を整える、誰かの話を聞く、部屋の家具を動かす、料理の段取りを組む。仕事らしくない答えで構いません。むしろ最初は、そのほうが混じり気が少ない。

会議では黙っていたのに、帰りの電車で同僚の相談には30分も乗っていた。頼まれていないのに、家の収納を直していた。こういう地味な反応に、その人の使いたい力が出ることがあります。履歴書には書きにくいですけどね。

動ける人が、動けない日もある理由

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「自分は行動力がない」と決めるのも、少し雑です。2015年の研究では、主体的に動く性格とキャリア決定の関係が調べられ、感情の変動性が高い人では、その主体性が迷いを減らす関係が弱まると報告されました。

感情の変動性とは、単に落ち込みやすいという話ではありません。一日の中で気分の向きや強さが大きく揺れ、そのたびに未来の見え方まで変わりやすいこと。脳は今の身体状態を材料にして、「この先は危なそうか、行けそうか」を予測します。寝不足や緊張で警戒が高い日は、前頭前野が比較や計画に使う余力も狭くなり、同じ選択肢が急に危険に見えやすい。

金曜の18時半、上司に「ちょっといい?」と呼ばれた直後に、帰り道で独立の動画を見る。昼なら「ちょっと面白そうだった企画」が、今は「失敗したら終わる話」に見える。候補が変わったのではありません。候補を見ている神経系の状態が変わっているわけです。

朝には応募しようと思ったのに、夜になると急に「やっぱり今の会社でいいか」となる。あなたの意志が薄いからではないかもしれません。脳が疲れた身体の警報を、人生全体の予言として読んでしまっていることがあるんです。

正直、寝不足のまま予定を詰め込んだ夕方に「もう何も決めたくない」となるのは、特別なことではありません。白湯を飲んでも人生設計は出てきません。でも翌朝に同じメモを見返すと、前夜ほど絶望的ではない。かなり地味な話だけど、この差は無視しないほうがいい。

書きながら思うんですが、「本当にやりたいこと」を探す前に、判断している自分のコンディションを読むほうが先の人は多いのかもしれません。

あなたはどうだろう? 大きな決断をしようとしているのは、眠れていて、お腹も空きすぎていない時間だろうか。空腹と睡眠不足のまま将来を採点すると、だいたい世界は必要以上に暗く見えます…これは気合いの問題ではなく、脳の仕事の仕方です。

答えを出そうとするほど、答えから離れることがある

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迷いが長いと、人は検索、自己分析、適職診断、動画視聴を増やします。情報不足型には情報が必要です。そこは間違えたくない。ただし、情報を増やすことと、選べるようになることは同じではない。

認知行動療法の考え方では、不安を下げるための確認行動は、その瞬間には楽でも、「確認しないと決められない」という学習を強めやすいとされています。キャリアの場面なら、求人を見比べる、口コミを読む、診断を受け直す、知人に聞く。この反復が悪いわけではない。でも、決断の不安を消す目的だけで続けると、脳は不確実さをますます警報として扱います。

日曜の夜23時、ベッドに入ってから「未経験 転職 30代 後悔」で検索する。口コミを七ページ読み、片方の会社が良く見え、次の投稿で怖くなる。午前0時を過ぎても判断材料は増えたのに、身体は固くなっている。枕元でスマホを顔に落としそうになりながら、まだ比較している…あれです。これは怠けではなく、不確実さを避けようとする学習のループです。

「ちゃんと調べてから決めたいだけなんです」と思うかもしれません。もちろん、調べること自体は必要です。ただ、調べた後に少し安心するのではなく、毎回もっと怖くなるなら、情報収集はもう情報収集だけではない。不安を一時的にしのぐ行動になっています。

だから、答え探しをゼロにしようという話ではありません。考える時間には、終わりを作る。たとえば候補を二つに絞ったら、それぞれについて「実際にやる作業」「会う人」「嫌な部分」を一人に聞く。空想の比較から、手触りのある情報へ移す。

01

混線を見分ける

情報不足、評価への反応、怖さによる停止を、一つの「迷い」にしない。

02

状態を整える

疲労や緊張で未来の予測が暗くなっていないかを確かめる。

03

小さく接触する

正解を決める前に、仕事・人・場所の現実へ触れ、自分の反応を集める。

ここでいう接触は、勢いで退職届を書くことではない。気になる職種の人と30分話す、単発の講座に行く、休日に一度だけ作業をやってみる。終えた後、達成感より「もう一回やってもいい」が残るかを見る。派手ではない。でも、脳の予測を現実に合わせ直すには、この地味さが案外強い。

一回やってみて「思ったより疲れた」も、ちゃんと収穫です。逆に、下手なのに妙に続きを知りたくなることもある。その反応を集めずに、頭の中だけで天職を決めようとするのは、試着せずに靴を買い続けるようなものです。サイズが合わないなら、まず履いてみるしかない。

それでも言葉にならないものが残るなら

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情報も集めた。話も聞いた。なのに、候補を前にすると体が固まる。こういうとき、足りないのはキャリア知識だけではないのだと思います。

長く繰り返した「迷惑をかけない」「失敗しない」「期待に応える」といった反応は、頭で反論しても、緊張した場面で先に動きます。扁桃体は危険らしき手がかりにすばやく反応し、前頭前野の理屈は少し遅れて到着する。会議で自分の意見を言う直前、喉が乾き、無難な案に引っ込める。あとで「本当は別の案があった」と思う。あの順番です。

たぶんあなたにも、送信寸前まで書いたメッセージを消して、角の立たない文に変えたことがあるはずです。頭では「断っても大丈夫」とわかっている。でも身体は、その場を危険だと処理している。頭で「自分らしく選ぼう」と何百回唱えても、先に反応する回路はそれだけでは変わりません。

ここは、はっきり言います。頭で「わかる」ことと、人生が「変わる」ことは別ものです。現代の悩みは、突き詰めると「本当の自分を知らない」ことに行き着く、と僕は思っています。知識や正論が足りないのではなく、身体と感情が何に縮み、何に動くのかを、本人がまだ取り戻せていない。だから、正しい選択肢を増やすだけでは足りない人がいるんです。

nehanの走馬灯をみる旅は、八ヶ岳の森で2泊3日かけて、音響・呼吸への働きかけ・身体感覚を組み合わせながら、こうした古い反応との距離をつくっていくリトリートです。宿で休んで気分転換するだけの企画ではありません。安全な場で段階を踏み、普段の思考では触れにくい感情や記憶の反応を見つめ、日常の選択に持ち帰れる感覚へつなげていきます。

「リトリートって、結局は現実逃避じゃないの?」と思う人もいるでしょう。そう見える企画があるのも事実です。でも、nehanが提供しているのは、現実から目をそらすための休暇ではありません。むしろ逆です。普段なら忙しさや正しさで上書きしてしまう、自分の反応を見に行くための場です。リトリートは癒やしの消費ではなく、精神性をアップデートする道場だと僕は考えています。

そこで起きうるのは、「この仕事を選べ」という答えを渡されることではない。ずっと親の顔色で決めていたことに気づく、嫌いだと思っていた仕事の中に好きな部分を見つける、断れなかった誘いへ一拍置ける。そんな、選択の土台が動く変化です。個人差はありますけど。

月曜の朝に求人アプリを開いたとき、急に人生の正解が表示されるわけではありません。でも、「これ、本当に自分が怖がっていることかな」と一度立ち止まれるなら、その一拍は大きい。やりたいことは、焦ってひねり出すものではないんですよ。自分の反応を取り戻した先で、少しずつ輪郭を持ち始めるものです。

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FAQ

Q: 30代でやりたいことがないのは遅いですか? A: 遅いとは思いません。役割や経験が増えた30代は、20代の頃の憧れがそのまま使えなくなる時期でもあります。古い目標が合わなくなったことと、何もないことは別です。

Q: 適職診断を受ければ答えは出ますか? A: 言語化の材料にはなります。ただ、診断は今の回答から傾向を映すもの。疲労、評価への不安、実際の職場の空気までは測りきれません。結果を結論ではなく仮説として扱うと役立ちます。

Q: 仕事を辞めてから考えたほうがいいですか? A: 退職が選択肢になる事情もありますが、消耗が強い状態では未来の予測が極端になりやすい。生活の安全を確かめつつ、小さな接触で感覚を集めてからでも遅くありません。

やりたいことがわからないのは、あなたの中身が薄いからではない。答えを急ぐほど、聞こえにくくなる反応があるだけです。

頭ではわかっていても、いつもの場にいるといつもの選び方へ戻ってしまう。その先で、感情・身体感覚・思考の癖をどう扱うのかは、無料のオンライン講座で話しています。情報を増やすだけでは進まなかった人にこそ、見てほしい内容です。

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出典・参考

  • Levin, N. ら(2022)Career Decision-Making Difficulties Questionnaireを用いた、14歳から50歳8,918名のキャリア決定困難に関する潜在プロフィール分析(PubMed: 35025548)
  • 萩原俊彦・櫻井茂男(2008)「やりたいこと探し」の動機の自己決定性と進路不決断の関連、日本教育心理学会
  • Park, I. J.(2015)主体性、感情の変動性、キャリア決定困難・キャリア成熟度の関連(PubMed: 26635665)
  • Beck, J. S.『認知行動療法実践ガイド:基礎から応用まで』認知行動療法における不安と安全確保行動の枠組み

本記事は一般的な情報であり、医療上の助言ではありません。体調に不安がある場合は専門家にご相談ください。

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Yoshihiro Koitani

Yoshihiro Koitani

メキシコ移住20年。先住民族やシャーマニズムの儀式を通じて、人が自然と深くつながる原点を学ぶ。トゥルムで国際的なリトリートを企画・開催。2024年に帰国しnehanリトリートセンターを設立。「本当の私」と出会うリトリートを届けています。

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